嘘の実

あなたが好きです。
この愛は永遠です。

そう言って始まった関係が、心変わりで終わる。
最初に誓ったはずの言葉は、果たして嘘なのか。

始めが真意なら、結果が伴わなくても嘘ではないのか。
結果が伴わなければ、始めが真意でも嘘と断ずるのか。

良い嘘と、悪い嘘とがあるのですか。
あるならば、それは誰が決めますか。

許される嘘と、許されない嘘があるのだろうか。
騙すつもりじゃなければ、許されるのだろうか。

嘘にするまい、その努力は評価されるのでしょうか。
つくしかなかった嘘は、誰がどう裁くのでしょうか。

騙されたと叫ぶあなたは、汚れ無き正直者か。
騙し騙されて、生きていくしかありませんか。

人の世も、人の心も、いつだって複雑で無常。

誠実や不誠実、責任や無責任、常識や非常識、善意や悪意、善行や偽善、努力や怠慢、厚情や非情、期待や不安、罪や罰、本音や建前、加害や被害、合法や違法、権利や義務、攻撃や防御、保身や失脚、お金や欲望、見栄や嫉妬、過去や未来、幸せ不幸せ、そして男と女。

嘘の周りには、人間臭いあれやこれやが、たわわに実っているものです。

 

 

© 2024 Kentaro TAKANO